「営業はきつい」と言われます。ノルマに追われ、飛び込みで断られ続け、夜まで数字を詰められる——そんなイメージを持っている方は多いと思います。
ただ、このイメージには出どころがあります。個人向けに、新規開拓を、歩合制で行う営業という特定のモデルです。そして、このモデルは兵庫県の優良企業が募集している営業職とは、かなり違います。
この記事では、印象論で語らず、ジョブスコアに掲載されている営業職の求人49件を実際に調べて、「きつい」と言われる5つの要素がどこまで当てはまるのかを検証します。そのうえで、本当にきつい部分についても正直にお伝えします。
ジョブスコア掲載の求人201件のうち、職種が「営業系」に分類されるもの49件(2026年10月時点)。ジョブスコアは5つの評価軸で70点以上の企業だけを掲載しているため、兵庫県の求人全体ではなく「一定の水準を満たした企業の営業職」の姿として読んでください。
- 「営業はきつい」は5つの要素に分解できる
- 【検証1】ノルマ|49件中4件が「ノルマなし」を明記
- 【検証2】飛び込み・新規開拓|記載はゼロ件
- 【検証3】残業と休日|年間休日120日以上が中心
- 【検証4】転勤|47/49が兵庫県内勤務
- 【検証5】年収|歩合ではなく固定給が基本
- それでも営業がきつい、本当の理由
- 「きつくない営業」を見分ける5つのチェックポイント
- よくある質問
- まとめ
1. 「営業はきつい」は5つの要素に分解できる
「きつい」という言葉は曖昧です。何がきついのかを分けて考えないと、自分に当てはまるかどうか判断できません。営業の「きつさ」は、次の5つに分解できます。
重要なのは、この5つはセットではないということです。ノルマはあるが転勤はない会社も、新規開拓はないが製品知識の習得が重い会社もあります。1つずつ見ていきます。
2. 【検証1】ノルマイメージと異なる
49件の求人タイトルと募集内容を確認した結果です。
| 「ノルマなし」を明記 | 4件(ルート営業・法人営業・提案営業) |
|---|---|
| 「ノルマ達成」「数字で稼ぐ」を訴求 | 0件 |
| 「インセンティブ」「歩合」を訴求 | 0件 |
注目してほしいのは「ノルマなしが4件」より、「ノルマを売りにした求人が1件もない」ほうです。
成果主義で高収入を狙える営業であれば、求人票は「頑張った分だけ稼げる」「月収100万円可能」といった訴求をします。それが49件中ゼロということは、兵庫県のメーカー・商社・建設会社の営業は、そもそも歩合で人を集めるモデルではないということです。
ここは正確に理解してください。ノルマがないというのは、「未達で詰められる・減給される仕組みがない」という意味であって、売上目標そのものが存在しないわけではありません。予算はあり、達成状況は共有されます。違うのは、未達が個人の処遇に直結するかどうかです。
3. 【検証2】飛び込み・新規開拓ほぼ該当しない
「営業はきつい」の中核にあるのが、断られ続ける新規開拓です。これを49件で確認しました。
| 「新規開拓」の記載 | 0件 |
|---|---|
| 「飛び込みなし」を明記 | 2件 |
| 「ルート営業」「ルート販売」を明記 | 約16件(営業求人の3分の1) |
| 「技術営業」「営業エンジニア」 | 約8件 |
| 「既存顧客メイン」「深耕」を明記 | 複数 |
実際の求人タイトルは、こうした形です。
- 法人企業への潤滑油・燃料のルート販売営業
- プレカット・建材のルート営業(未経験歓迎)
- 既存顧客メインの提案営業(ノルマ・飛び込みなし)
- 大手メーカーを担当するルート営業
- 自社製品の推進・顧客対応・アフターフォローを行う技術営業
- 内勤営業(出張なし・残業10時間程度)
なぜこうなるのか。理由は兵庫県の産業構造にあります。掲載企業の55%がメーカー、33%が建設・不動産、22%が商社です。これらの業界は、取引が長期継続し、一度の商談で関係が終わりません。新規飛び込みで売る商材ではなく、既存取引先との関係を維持・深耕することが営業の仕事になります。
4. 【検証3】残業と休日条件は明示されている
営業は「残業が多い」と言われますが、求人票の記載を見ると様子が違います。
49件のうち年間休日を明示している求人では、120日以上が中心でした。具体的には年間休日120日、121日、122日、125日、126日といった記載が並びます。週休2日に祝日と年末年始を加えると120日前後になるため、これは土日祝が基本的に休める水準です。
残業についても「残業15時間程度」「残業10時間程度・出張なし」といった形で、具体的な時間を明記している求人があります。
「残業少なめ」「残業ほぼなし」という定性的な表現しかない求人は、実態を確認する必要があります。とくに固定残業代(みなし残業)が設定されている場合、「月◯時間分を含む」という条件を見落とすと、想定していた時間を大きく超えることがあります。年収レンジの中に何時間分の残業代が含まれているかは、必ず確認してください。
5. 【検証4】転勤ほぼ発生しない
営業職で生活設計に最も影響するのが転勤です。ここは数字がはっきりしています。
| 勤務地が兵庫県内 | 49件中47件 |
|---|---|
| 県外勤務 | 2件(神奈川・大阪) |
| 「転勤なし」を明記 | 5件 |
勤務地は神戸市、姫路市、明石市、芦屋市、加西市、三木市、多可郡など、兵庫県内に広く分散しています。
理由は施工管理の場合と同じです。転勤の有無は職種ではなく、その会社の営業エリアで決まります。兵庫県に本社を置き、関西圏の取引先を相手にしている企業であれば、そもそも転勤させる先の拠点がありません。全国に支店網を持つ大手メーカーの営業とは、この点が構造的に違います。
ノルマの重さや人間関係は入社しないと分かりませんが、転勤の有無は会社の拠点数を見れば入社前に判断できます。拠点が兵庫県内に限られている企業なら、転勤のリスクは構造的にありません。企業情報の「事業所一覧」を必ず確認してください。
6. 【検証5】年収固定給中心・レンジは中位
想定年収が記載されている中途採用の営業求人20件から、レンジを集計しました。
上限700万円に達していたのは海外営業と技術営業でした。語学や製品知識といった、代替しにくい専門性が年収に反映されています。逆に下限300万円台は、未経験歓迎のルート営業・建設資材販売などです。
この分布から読み取れることは明確です。
- 歩合で跳ねる構造ではない——「月収100万円可能」のような求人は1件もありません
- 代わりに下限も崩れない——固定給ベースなので、売れない月に生活が苦しくなることがありません
- 上を目指すなら専門性——海外営業、技術営業など、知識で差がつく領域に年収の上限があります
7. それでも営業がきつい、本当の理由
ここまで5つの要素を検証して、ノルマ・新規開拓・転勤・歩合については、兵庫県の優良企業の営業にはあまり当てはまらないことが分かりました。
ただ、だから営業は楽だ、という話ではありません。ルート営業・技術営業には、イメージとは別の種類のきつさがあります。ここを知らずに入ると、違うギャップに苦しむことになります。
① 顧客の都合で1日が決まる
これは営業職である限り避けられません。納期が遅れた、不具合が出た、急に設計変更が入った——こうした連絡は、自分の予定に関係なく入ってきます。計画通りに1日を進めたい人にとっては、構造的にストレスになります。
② 社内で板挟みになる
顧客は「もっと早く・安く」と言い、製造や設計は「その条件では無理だ」と言います。営業はこの間に立ち続ける仕事です。メーカーや建設業の営業では、社外交渉より社内調整のほうが難しいという場面が珍しくありません。
③ 失注の重みが違う
新規開拓なら、断られても失うものはありません。しかしルート営業で既存顧客を失うと、何年もかけて前任者が積み上げた取引を自分の代で失ったことになります。ノルマによる詰めはなくても、このプレッシャーは別物として存在します。
④ 製品知識の習得が重い
技術営業や、メーカー・専門商社のルート営業では、商材の知識が商談の前提になります。金属材料、建材、潤滑油、産業機械——顧客は自社の工場のプロなので、生半可な知識では相手にされません。入社後1〜2年は、覚えることの多さが最もきつい部分になります。
⑤ 人間関係が長期固定される
担当顧客は基本的に変わりません。相性が合わない担当者とも、何年も付き合い続けることになります。短期で関係を切り替えられる新規開拓型とは、逆の性質のストレスです。
新規開拓型のきつさは瞬発的です。断られる痛みに耐えられるかが問われます。ルート営業・技術営業のきつさは持続的です。知識を積み続け、関係を保ち続け、板挟みに耐え続けられるかが問われます。どちらが自分にとってマシかは、人によって完全に分かれます。
8. 「きつくない営業」を見分ける5つのチェックポイント
求人票と面接で確認すべき項目を、重要な順にまとめます。
売上の作り方——既存か、新規か
「ルート営業」「既存顧客」「深耕」とあれば既存型、「新規開拓」「エリア拡大」とあれば新規型です。記載がない場合は必ず面接で聞いてください。「売上の何割が既存顧客からですか」と尋ねるのが最も確実です。
給与の構成——固定給と変動給の比率
想定年収のレンジだけでなく、その中で固定給が何割かを確認します。固定給中心なら収入は安定し、歩合比率が高いなら成果が直接響きます。あわせて、固定残業代が何時間分含まれているかも必ず見てください。
拠点の数——転勤が構造的に起こり得るか
制度として「転勤なし」と書かれているかより、そもそも転勤できる拠点があるかを見るほうが確実です。兵庫県内に本社と工場しかない企業なら、転勤のしようがありません。
評価のされ方——何で評価されるのか
売上だけで評価されるのか、継続率・顧客満足・改善提案も見られるのか。評価軸が売上一本の会社は、ノルマなしと書いてあっても実質的に数字のプレッシャーが強くなります。「この職種で評価される人は、どんな人ですか」と面接で聞くと実態が分かります。
教育体制——製品知識をどう身につけるか
既存型の営業では、商材知識の習得が最初の壁になります。同行期間がどのくらいあるか、独り立ちまでの標準期間はどれくらいかを確認してください。「見て覚えろ」の会社は、未経験者にとって最もきつい環境になります。
9. よくある質問
10. まとめ
| 要素 | 兵庫県の優良企業ではどうか |
|---|---|
| ノルマ | 売りにした求人は0件。4件が「ノルマなし」を明記 |
| 新規開拓 | 記載0件。ルート営業・技術営業が中心 |
| 残業・休日 | 年間休日120日以上が中心。残業時間を明記する求人も |
| 転勤 | 49件中47件が兵庫県内勤務 |
| 歩合給 | 記載0件。固定給中心で下限が崩れない |
一方で、別の種類のきつさがあります。顧客都合に振り回されること、社内で板挟みになること、既存顧客を失う重み、製品知識の習得、長期固定の人間関係。これらは営業である限り残ります。
「営業はきつい」という言葉を、そのまま受け取る必要はありません。きつさには種類があり、どの種類が自分にとって耐えられないのかを先に決めておけば、求人票の読み方が変わります。
飛び込みで断られ続けるのが無理なのか、覚えることが多いのが無理なのか、板挟みが無理なのか。ここが分かっていれば、同じ「営業職」という求人の中から、自分が続けられる会社を選べるようになります。
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